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| 「新宿の坂道紀行 歌坂
外掘り通りから牛込中央通りに入る。市谷砂土原3丁目と、坂標の後ろに法政大学エクステンションカレッジ他の建物のある市谷田町2丁目に挟まれて、歌坂は北東に上がる。 古い絵図にも現在と同じ道筋があって、雅楽坂・ウタ坂などの別名もあるので、いかにも古い坂だと思えるにもかかわらず、歌舞音曲には関わりがないという。つまり「歌」は「うとう」という言葉の、数多くある当て字の一つであるらしい。「うとう」は鳥のくちばしに似た「さし出たる」地形を示す言葉であって、なんとアイヌ語で「突起」を意味するんだそうだ。歌坂を上りきった道をどんどん行って、ちょっと外堀方面を振り向くと、建物がそろって崖下から立ちあがっていて、場所によっては3・4階の窓と対峙することに気がつく。たしかに地形は、神楽坂方面から「さし出たる」。もっと見晴らしのよい時代であれば、鳥の太いくちばしに見えるだろうと思う。「突き出た」地形に「うとう」という言葉を、さまざまな字を当てて使う例は全国に数あるが、「烏頭」こそが言い得ていると、あの滝沢馬琴が言っている。が、実は現在、「うとう」の意味をを知る人は少ないだろう。ただ青森市の鳥に指定され「善知鳥」の字を当てた海鳥の名や、同市の善知鳥神社、棟方志功の版画を思い浮かべた人はいるだろう。能、峠、純米酒、にも使われている。いずれにしてもわたしは、この坂を最初に「うとう」と呼んだ人に会ってみたい。 ところで、坂に沿って在る法政大学エクステンションカレッジは、社会人講座が充実している。縁あって「神楽坂まちの手帖」のプロデュースで、この秋からは「編集講座」も開かれる予定だ。カレッジ長の柳沼教授はとても意欲的で、今後、神楽坂のまちとの連携もおおいにありそうで楽しみだ。 (明森 まつり) |